
ようこそ!サルボルトだよ
今回は、キルヒホッフの法則について、徹底的に勉強しよう。
オームの法則(\(V=RI\))だけで解ける単純な回路ならいいんだけど、電池が2つあったり、抵抗が複雑に絡み合った「ブリッジ回路」なんかが出ると、もうお手上げ。
そんなときに使うのが、この「キルヒホッフの法則」だ。
名前はいかついけど、言ってることは超シンプル。
第一法則:「電気は消えたり増えたりしない(流れ込み=流れ出し)」
第二法則:「行って帰ってきたら、高さは元通り(高低差ゼロ)」
たったこれだけなんだ。
今日は、この法則を「登山(ハイキング)」に例えて解説する。
このイメージさえ持っていれば、どんなに複雑なパズルみたいな回路図が出ても、絶対に迷わずに式を立てられるようになるぞ!
第一法則:電流則(ジャンクションのルール)
まずは第一法則。
回路の「分岐点(ジャンクション)」に注目しよう。
キルヒホッフの第一法則
回路の分岐点において、
「流れ込む電流の和」=「流れ出す電流の和」
が成り立つ。
当たり前だよね。
水路の分岐点で、水が勝手に消滅したり、湧き出したりしないのと同じ。
例えば、点Aに、\(I_1\) と \(I_2\) が流れ込んできて、\(I_3\) が流れ出ていくなら、
$$I_1 + I_2 = I_3$$
これだけ。何も難しくない。
第二法則:電圧則(登山のルール)
問題はこっちだ。多くの受験生が符号(プラス・マイナス)でミスをする。
第二法則を理解するために、回路を「山登りのコース」だと思ってみよう。
「電位(電圧)」=「標高(高さ)」だ。
- 電池(起電力 \(E\)):
ポンプみたいなもの。低いところから高いところへ、水を汲み上げる。
\(\to\) 「リフト(エスカレーター)」だ。一気に高さが \(E\) だけ上がる! - 抵抗(\(R\)):
電流が流れると電圧が下がる(\(V=RI\))。
\(\to\) 「滑り台(坂道)」だ。電流の流れる向きに、高さが \(RI\) だけ下がる! - 導線:
抵抗なし。
\(\to\) 「平坦な道」だ。高さは変わらない。

キルヒホッフの第二法則が言っているのは、こういうことだ。
キルヒホッフの第二法則
回路の任意の「一周コース(閉回路)」を回って元の場所に戻ってきたとき、
「上がった高さの合計」と「下がった高さの合計」は等しい。
(つまり、トータルの高低差はゼロ!)
式で書くと、
$$\sum (\text{起電力}) = \sum (\text{電圧降下})$$
「リフトで上がった分」=「滑り台で下がった分」。
これが一周して元の場所(標高)に戻るための条件だよね。
第3章:式を立てる「鉄の掟(おきて)」
さあ、実際に式を立てる練習をしよう。
ここで適当にやると符号ミスをする。必ず以下の「4ステップ」を守ってほしい。
【ステップ1】電流を仮定して矢印を描く
各抵抗に流れる電流 \(I_1, I_2 \dots\) の向きを、自分で決めて矢印を描き込む。
(向きは適当でいい!計算結果がマイナスなら「逆だった」とわかるだけだから、悩まなくてOK!)
【ステップ2】一周するコース(ループ)を決める
「時計回り」か「反時計回り」か、自分が歩くコースを決めて、グルッと矢印を描く。
【ステップ3】歩きながら、高低差をメモする(重要!)
決めたコースに沿って、指でなぞりながら進む。
- 電池を通るとき:
「短い線(−)」から「長い線(+)」へ進む \(\to\) 上がる(+E)
「長い線(+)」から「短い線(−)」へ進む \(\to\) 下がる(−E) - 抵抗を通るとき:
「電流の矢印(ステップ1で書いたやつ)」と同じ向きに進む \(\to\) 流れに乗って下る (下がる:−RI)
「電流の矢印」と逆向きに進む(逆走!) \(\to\) 坂を登る (上がる:+RI)
【ステップ4】全部足して「=0」にする
「上がった分(プラス)」と「下がった分(マイナス)」を全部足したら、ゼロになる。

教科書の「起電力の和=電圧降下の和」より、
「全部足して=0(\(\sum \Delta V = 0\))」
の方が、符号ミスが少ないからオススメだ!
「上がる(+)」「下がる(−)」の感覚だけで式が作れるからね。
実践演習:複雑な回路を解こう!
言葉だけじゃわからないから、実際にやってみよう。
下図のような回路がある。電池 \(E_1 = 10V, E_2 = 20V\)、抵抗 \(R_1 = 2\Omega, R_2 = 4\Omega, R_3 = 2\Omega\) である。
各抵抗を流れる電流 \(I_1, I_2, I_3\) を求めよ。

解説
ステップ1:電流の仮定
図のように、すべて「左から右」「上から下」に向かうと仮定しよう。
・上段:\(I_1\)
・中段:\(I_2\)
・下段:\(I_3\)
ステップ2:第一法則(ジャンクション)
左側の合流点Aに注目。
\(I_1\) と \(I_2\) が合流して、\(I_3\) になる。
$$I_1 + I_2 = I_3 \quad \cdots ①$$
ステップ3:第二法則(ループ)
【ループ1:上の小ループを時計回りに】
左下の点からスタート。
1. 電池 \(E_1\):マイナスからプラスへ \(\to\) 上がる(+10)
2. 抵抗 \(R_1\):電流 \(I_1\) と同じ向き \(\to\) 下がる(\(-2I_1\))
3. 抵抗 \(R_2\):電流 \(I_2\) と逆向き(遡る!) \(\to\) 上がる(\(+4I_2\))
4. ゴール(元の高さ)。
式: \(+10 – 2I_1 + 4I_2 = 0 \quad \cdots ②\)
【ループ2:下の小ループを時計回りに】
左下の点からスタート。
1. 抵抗 \(R_2\):電流 \(I_2\) と同じ向き \(\to\) 下がる(\(-4I_2\))
2. 抵抗 \(R_3\):電流 \(I_3\) と同じ向き \(\to\) 下がる(\(-2I_3\))
3. 電池 \(E_2\):プラスからマイナスへ \(\to\) 下がる(\(-20\))
…あれ?下がりっぱなし?あ、ごめん図の電池の向き逆だったかも。
(※電池 \(E_2\) が右向き(右がプラス)だと仮定して進めます!)
3. 電池 \(E_2\):マイナスからプラスへ \(\to\) 上がる(+20)
4. ゴール。
式: \(-4I_2 – 2I_3 + 20 = 0 \quad \cdots ③\)
ステップ4:連立方程式を解く
①を、②と③に代入して \(I_3\) を消去すれば解ける。
計算すると…(省略)
\(I_1 = 7A, \quad I_2 = 1A, \quad I_3 = 8A\)
全部プラスになったから、仮定した向きは合っていたってことだね!
物理強者向け:保存則との関係
(ここからは、ハイレベルな方には敬語を使います)
キルヒホッフの法則は、単なる経験則ではなく、電磁気学の根本的な保存則に基づいています。
1. 第一法則と「電荷保存則」
第一法則(\(\sum I_{in} = \sum I_{out}\))は、「電荷は消滅しない(電荷保存則)」の言い換えです。
電流とは「1秒間に流れる電荷の量(\(I = dq/dt\))」ですから、分岐点に電荷が溜まり続けない限り(定常電流)、入った分だけ出なければ計算が合いません。
これは、マクスウェル方程式から導かれる連続の式 \(\nabla \cdot \vec{j} + \frac{\partial \rho}{\partial t} = 0\) において、定常状態(\(\frac{\partial \rho}{\partial t} = 0\))とした \(\nabla \cdot \vec{j} = 0\)(発散なし)に対応します。
2. 第二法則と「エネルギー保存則(保存場)」
第二法則(\(\sum V = 0\))は、静電場が「保存力場」であることに由来します。
電位(ポテンシャル)\(V\) は、単位電荷あたりの位置エネルギーです。
静電場において、一周して元の場所に戻ったとき、エネルギーの収支がゼロになる(\(\oint \vec{E} \cdot d\vec{l} = 0\))というのは、エネルギー保存則そのものです。
(ただし、電磁誘導などで磁束が変化している場合、\(\oint \vec{E} \cdot d\vec{l} = -\frac{d\Phi}{dt} \neq 0\) となり、渦電流が生じるため、単純なキルヒホッフの第二法則は成り立たなくなることに注意が必要です。これが「誘導起電力」として右辺に登場するわけですね)
おわりに
キルヒホッフの法則、どうだったかな?
難しく見える回路図も、一歩一歩「リフトで上がって、滑り台で下りて…」と指でたどっていけば、ただの足し算引き算になる。
攻略のコツ:
1. 電流の矢印を適当に書く。
2. ループを決めて、指でなぞる。
3. 「電池はリフト(上がる)」「抵抗は滑り台(下がる)」と唱えながら式を書く。
4. 逆走するときだけ「抵抗を登る(上がる)」に注意!
これで、どんな回路問題も怖くない!
さあ、練習問題で「登山」を楽しんできてくれ!
それでは次の記事で!

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