相対運動エネルギーとは?二体問題を簡単に解く方法を学ぼう

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サルボルト
サルボルト

ようこそ!サルボルトだよ

今回は、相対運動エネルギーについて勉強しよう。

実はコイツ、なかなかに偉いやつなんだ。

みんな苦手なバネの問題や、摩擦熱の問題など、いろんな問題で使える強力な武器なんだけど、意外と知らない人も多いみたい。

導出するのは結構大変だけど、最後までついてきてね。

用語の確認:二体問題って?

二体問題は、2つの物体が動く、という問題のことを言う。

2つの物体がバネで繋がってたり、2つの物体が衝突しあったり…

ただそれだけ。

サルボルト
サルボルト

じゃ、なんで「2つ」の物体の問題について考えるんだと思う?

正解は、「3つ以上の物体の運動は解けないから」

もちろん、絶対に解けないわけじゃないんだけど、本当に特別な場合じゃないと解けないことが証明されちゃってるんだ。

近似をしてみたり、コンピュータで実験してみたり、ということはできるけど、厳密な答えは求まらない。

でも、2つまでなら解けちゃうんだよね。

それなら二体問題、解いちゃうか〜、というモチベでこの先に進んでほしい。

「解けない」というのは、解析的に解くことができない、ということを意味します。

本日のゴール

二体問題の例として、次の問題を考えてみよう。

問題

重力加速度を\(g\)とする。水平でなめらかな台の上に、質量\(M\)の板を置く。その上に、質量\(m\)の小物体を置く。2物体間の動摩擦係数は\(\mu’\)である。小物体にのみ初速\(v_0\)を与え、十分な時間が経過すると、2物体は一体となって運動を続けた。小物体は板の上を直線距離\(h\)だけ滑ったとするとき、\(h\)を求めよ。

一回、この問題を紙とペンを用意して解いてみてほしい。


これを解くのはかなり大変…というのは理解してくれるよね?

でも、この記事を最後まで読んでいただけると、文字通り瞬殺できるんだ。

中身はまだ理解できなくてOK。

解答

換算質量を\(\mu=\dfrac{mM}{m+M}\)とすれば、相対運動エネルギーの収支より$$\frac{1}{2}\mu v_0^2 = \mu’mgh$$したがって、$$h=\frac{\mu v_0^2}{2\mu’mg}=\frac{M v_0^2}{2\mu'(m+M)g}$$

ほらね。

こんなに一瞬で答えが出るなら、勉強したいと思うでしょう。

重心運動

ここで普通なら、いきなり一般的な運動について高校・大学の先生は教え出すだろう。

下の式みたいな感じだね。

$$
\left\{
\begin{aligned}
m_1\boldsymbol{\ddot{r}_1}&= \boldsymbol{F_1} + \boldsymbol{F_{21}} \\
m_2\boldsymbol{\ddot{r}_2}&= \boldsymbol{F_2} + \boldsymbol{F_{12}}
\end{aligned}
\right.
$$

でも、このサイトは「サルでもわかる高校物理」。

そんな難しいことはしない。

今から、さっきの例題について、普段より少しだけ深く考察してみよう。

もちろん、「考察」というくらいだから、普段より遠回りかもしれないけど、じっくりと読んで考えて楽しんでほしいな。


まずは、この問題を普段通りに解くことを考えて、運動方程式を立ててみよう。

$$
\left\{
\begin{aligned}
ma&= -\mu’mg \\
MA&= \mu’mg
\end{aligned}
\right.
$$

普段の君なら、この2つの運動方程式を別々に解いて、速度を求めて、運動エネルギーと摩擦熱の関係を考えて…ということをするよね。

でもそんな難しいことは、できたらやりたくない。

ジーーーーーーーーーーーーーっと式を眺めてみよう。

2つの式を足し算すると、どうなると思う?

$$ma+MA=0$$

嬉しいことに、いかにも面倒くさそうな摩擦力が、消えた。

物理的な理由から考えれば、お互いに及ぼしあう摩擦力は、作用・反作用の法則によって、必ず0になるんだ。

ここで、突然すぎて本当に申し訳ないと思っているんだけど、両辺を\(m+M\)で割ってほしいんだ。

$$\frac{ma+MA}{m+M}=0$$

まだピンときていないかもしれないけど、この式の「形」を見た事ないかな?

実は、重心の位置を求める公式にそっくりなんだよね。

$$x_G = \frac{mx+MX}{m+M}$$

簡単な微分の知識がないと難しいと思うんだけど、位置\(x\)を加速度\(a\)に置き換えてもよくて、新しく重心加速度というものを求められるようになる。

$$a_G = \frac{ma+MA}{m+M}$$

ということは、さっき求めた\(\dfrac{ma+MA}{m+M}=0\)という式は、\(a_G=0\)という超シンプルな式に置き換えられるんだ。

$$a_G=0$$

加速度がゼロ、ということは、等速直線運動だから、重心だけを見れば等速直線運動していることがわかった。

もっというと、この2物体の外力は0だから、等速直線運動しているんだね。

この事実はメモしておこう。

相対運動

このままではいけない。

僕たちが解こうとしている連立方程式は、2つの式でできていたよね?

でも、今は\(a_G=0\)という式しかないから、もう1つの式を作らないと方程式を完全に解くことはできない。

ここで、相対加速度を考えてみよう。

サルボルト
サルボルト

なにそれ?って思うかもしれないけど、全く難しくないからね。

相対加速度っていうのは、\(\color{red}{a-A}\)のこと。

「台から見たときの小物体の加速度」とも言えるけど、一旦は加速度の引き算のことだと思っておけば難しくない。

式がややこしくなると嫌だから、重心加速度\(a_G\)みたいに、相対加速度\(a_r\)を定義してみよう。

$$a_r=a-A$$

それじゃ、さっきの連立方程式から\(a_r\)を計算してみよう。

元々の式は、こんな感じだった。

$$
\left\{
\begin{aligned}
ma&= -\mu’mg \\
MA&= \mu’mg
\end{aligned}
\right.
$$

それぞれ\(a, A\)について解いてから、引き算してみよう。

$$a_r=(-\mu’mg)\left(\frac{1}{m}+\frac{1}{M}\right)$$

「ん?展開すれば確かに合ってるけど、式の形が変じゃない?」って思ったかな?

実はわざと摩擦力\(-\mu’mg\)を残して、うまい具合に式の形を綺麗にしてみたんだ。

サルボルト
サルボルト

大人の都合ってやつよ。

それじゃあ、いかにもわざとらしい\(\dfrac{1}{m}+\dfrac{1}{M}\)を、新しい文字\(\mu\)を使って次のように定義してみよう。

$$\frac{1}{m}+\frac{1}{M}=\frac{1}{\mu}$$

\(\mu\)は、ここでは摩擦係数ではなくて、質量を表すときによく使う文字\(m\)のギリシャ文字を使っているだけだから注意!

それじゃあ、\(a-A\)の式に戻って、代入してみようか。

$$a_r=(-\mu’mg)\left(\frac{1}{\mu}\right)$$

分数が気持ち悪いので、\(\mu\)で分母を払おう。

$$\mu a_r=-\mu’mg$$

見慣れない文字\(\mu\)を使ってるからわかりにくいけど、この式、運動方程式\(ma=f\)に似ていないかな?

\(a_r\)は加速度だし、\(-\mu’mg\)は摩擦力だ。

\(\mu\)はどうやら質量っぽいので、これからは換算質量と呼ぶことにしよう。

めっちゃ大事な内容なので、メモしておいてね。

というわけで、連立方程式の2つ目の式である\(\mu a_r=-\mu’mg\)をゲットできた。

これまでの考察から、次の2つの連立方程式は、同値だということがわかったね。

$$
\left\{
\begin{aligned}
ma&= -\mu’mg \\
MA&= \mu’mg
\end{aligned}
\right.
$$$$
\left\{
\begin{aligned}
a_G&=0 \\
\mu a_r&= -\mu’mg
\end{aligned}
\right.
$$

たまに、「換算質量って結局なんなの?」という人がいるんだけど、これはあくまで見かけ上の質量だと割り切ってしまった方がいいかもしれない。

質量が\(\mu\)の物体なんて、この問題文の中には1つも登場していないんだけど、計算するときに便利だから、文字で置いただけ。

あまり深く考えすぎない方がいいと思うな。

相対運動エネルギー

もう少しだけ、\(\mu a_r= -\mu’mg\)について考察してみよう。

見かけだけでも運動方程式が成立するのであれば、そこからエネルギー保存則を導くことも可能だ。

運動エネルギーと摩擦熱の保存則だ。

つまり、今回の問題ではこんな式が成立することになるんじゃない?

$$\frac{1}{2}\mu v_r^2 + \mu’mgx = (一定)$$

\(v_r\)というのは、相対加速度\(a_r\)に対応する相対速度のこと。

相対速度は物理基礎の一番初めの方に習っているはずだから、忘れていたら復習してほしい。

\(x\)は当然滑った距離のことだね。

さて、さっきの式の左辺に出てきた\(\dfrac{1}{2}\mu v_r^2\)は、いかにも運動エネルギーって感じの式だね。

これを、相対運動エネルギーって言うんだ。

ここまでついてきたみんな、お疲れ様。

あとは、\(x\)について解くだけだよ。

物体の初速を与えた瞬間、小物体と台の速度の差は\(v_0-0=v_0\)で、滑った距離はこの時点では\(0\)だ。

2物体が一体となって運動しているときは、小物体と台の速度の差は\(0\)、滑った距離は\(h\)なのだから、エネルギー保存則から次のように計算できる。

$$\frac{1}{2}\mu v_0^2 + \mu’mg\cdot 0 = \frac{1}{2}\mu\cdot 0^2 + \mu’mgh$$

これを解けば、冒頭の答えである\(h=\dfrac{M v_0^2}{2\mu'(m+M)g}\)が出てくるんだ。

サルボルト
サルボルト

最後に\(\mu\)を代入し忘れないようにしてね!

もちろん、これを毎回導出する必要はない。

実際に問題を解くときは、以下のマニュアルに沿って計算するだけでいいよ。

まとめ
  1. \(a_G=0\)であるかを確認する。つまり、2物体の外力が0であることを確かめる。
  2. 相対速度\(v_r\)と換算質量\(\mu\)を求めて、エネルギー保存則を考える。

一般的な二体問題

このサイトを訪れるのにはふさわしくないくらいの物理強者のために、ガチガチの二体問題の場合の導出をご用意しました。(ハイレベルな方には敬語)

先ほどの例題と、導出の流れは全く変わりませんが、より一般的に解きます。

ベクトルと微分積分に関する知識を前提としています。

読みたい人だけどうぞ。

位置\(\boldsymbol{r_1}\)にある質点\(m_1\)には外力\(\boldsymbol{F_1}\)と内力\(\boldsymbol{F_{21}}\)が、位置\(\boldsymbol{r_2}\)にある質点\(m_2\)には外力\(\boldsymbol{F_2}\)と内力\(\boldsymbol{F_{12}}\)がかかっている状況を想定する。

今回は、2物体にかかる外力が共に\(\boldsymbol{0}\)である場合を考えるので、\(\boldsymbol{F_1}=\boldsymbol{F_2}=\boldsymbol{0}\)である。

運動方程式を立てると、

$$
\left\{
\begin{aligned}
m_1\boldsymbol{\ddot{r}_1}&=\boldsymbol{F_{21}} \\
m_2\boldsymbol{\ddot{r}_2}&=\boldsymbol{F_{12}}
\end{aligned}
\right.
$$

ここで、作用・反作用の法則により\(\boldsymbol{F_{21}}=-\boldsymbol{F_{12}}\)が成立する。

\(\boldsymbol{r_G}=\dfrac{m_1\boldsymbol{r_1}+m_1\boldsymbol{r_2}}{m_1+m_2}\)を定義すると、\(((式1)+(式2))/(m_1+m_2)\)より、

$$\boldsymbol{\ddot{r}_G}=\boldsymbol{0}$$

\(\boldsymbol{r_r}=\boldsymbol{r_1}-\boldsymbol{r_2}\)を定義すると、\((式1)/m_1-(式2)/m_2\)より、

$$\boldsymbol{\ddot{r}_r}=\left(\frac{1}{m_1}+\frac{1}{m_2}\right)\boldsymbol{F_{21}}$$

\(\dfrac{1}{\mu}=\dfrac{1}{m_1}+\dfrac{1}{m_2}\)を定義すると、整理して、

$$\mu\boldsymbol{\ddot{r}_r}=\boldsymbol{F_{21}}$$

したがって、

$$\left\{
\begin{aligned}
m_1\boldsymbol{\ddot{r}_1}&=\boldsymbol{F_{21}} \\
m_2\boldsymbol{\ddot{r}_2}&=\boldsymbol{F_{12}}
\end{aligned}
\right.
\Longleftrightarrow
\left\{
\begin{aligned}
\boldsymbol{\ddot{r}_G}&=\boldsymbol{0} \\
\mu\boldsymbol{\ddot{r}_r}&=\boldsymbol{F_{21}}
\end{aligned}
\right.$$

\(\mu\boldsymbol{\ddot{r}_r}=\boldsymbol{F_{21}}\)の各辺と\(\boldsymbol{\dot{r}_r}\)の内積をとり、時間で積分すると、

$$\int \mu\boldsymbol{\ddot{r}_r}\cdot\boldsymbol{\dot{r}_r} dt = \int \boldsymbol{F_{21}}\cdot\boldsymbol{\dot{r}_r}dt$$

$$\int \frac{d}{dt}\left(\frac{1}{2}\mu\boldsymbol{\dot{r}_r}^2\right) dt = \int \boldsymbol{F_{21}}\cdot d\boldsymbol{\dot{r}_r}$$

$$\frac{1}{2}\mu|\boldsymbol{\dot{r}_r}|^2-\boldsymbol{F_{21}}\cdot \boldsymbol{\dot{r}_r} = const.$$

おわりに

相対運動エネルギーの威力、わかってもらえたかな?

今後、noteで練習問題を投稿する予定なので、フォローして待っててくれると嬉しい。

外力のない二体問題なら、大体相対運動を考えておけばうまくいく。

換算質量の公式だけ、忘れないようにしてね。

それでは次の記事で!

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