ヤングの実験とは?光の干渉を証明する最も美しい実験!近似式もわかりやすく解説

サルボルト
サルボルト

ようこそ!サルボルトだよ

今回は、光の干渉(ヤングの実験)について、徹底的に勉強しよう。

波動分野のラスボスにして、高校物理の中で「最も美しい実験」の一つだ。

でも、教科書を開くと、そこには「近似」の嵐が待っている。

「\(L \gg d\) だから、平行とみなす?」
「\(\theta\) が小さいから、\(\sin \theta \approx \tan \theta\) ?」
「結局、経路差って \(d \sin \theta\) なの? \(\frac{dx}{L}\) なの?どっち!?」

こんな風に、式変形の途中で迷子になって、ただ公式 \(\Delta x = \frac{L\lambda}{d}\) を暗記して終わってしまう人が後を絶たない。

もったいない!

ヤングの実験は、「光が波であること」を証明した歴史的瞬間の追体験なんだ。

今日は、この実験の「全貌」を、サルでもわかるように、じ〜〜〜っくりと紐解いていくよ。

近似計算の「気持ち」から、明線・暗線の条件、そして最後には「波の式」を使った完全な導出まで、この記事一つで完結させるつもりだ。

序章:光は「粒」か「波」か?

昔々、物理学者たちは大喧嘩をしていた。

ニュートン派:「光は『粒(粒子)』だ!だって、影がくっきりできるじゃないか。波なら回り込むはずだ!」
ホイヘンス派:「いや、光は『波(波動)』だ!反射や屈折の説明がつく!」

長らく「光=粒」説が優勢だったんだけど、1800年ごろ、イギリスのトマス・ヤングという天才が、ある実験を行って論争に終止符を打った。

それが「ヤングの二重スリット実験」だ。

彼は、「もし光が波なら、2つの波が重なったとき、強め合ったり弱め合ったりする『干渉(かんしょう)』が起きるはずだ」と考えた。

そして実験の結果、壁には「明るい線(明線)」と「暗い線(暗線)」がシマシマ模様になって現れたんだ!

「粒」なら、2つの穴を通ったら、壁には「2つの点」ができるはず。でも実際は「シマシマ」になった。
これこそ、光が「波」である決定的な証拠だったんだ。

第1章:干渉の条件「経路差」

シマシマができる仕組みを、詳しく見ていこう。

2つのスリット(隙間)\(S_1, S_2\) から、同時に光の波がスタートする。

壁(スクリーン)上のある点 \(P\) に、2つの波が到達したとき、どうなるか?

  • パターンA(強め合い):
    \(S_1\) からの波と、\(S_2\) からの波が、ピッタリ「山と山」で到着した。
    \(\to\) 波は合体して巨大化する! \(\to\) 明るい!(明線)
  • パターンB(弱め合い):
    \(S_1\) からの波と、\(S_2\) からの波が、「山と谷」で到着した。
    \(\to\) 波は打ち消し合って消える! \(\to\) 暗い!(暗線)

この運命を分けるのは、2つの波が走ってきた「距離の差(経路差)」だ。

もし、距離の差が「波長 \(\lambda\) の整数倍(\(0, \lambda, 2\lambda…\))」なら、波はピッタリ重なる。(1波長ズレても、波の形は同じだからね)

もし、距離の差が「波長 \(\lambda\) の半分ズレ(\(0.5\lambda, 1.5\lambda…\))」なら、山と谷がぶつかる。

つまり、ヤングの実験のすべては、次の式に集約される。

干渉の条件式
経路差 \(|S_1P – S_2P|\) が…
・\(m\lambda\) (\(m=0,1,2…\))なら \(\to\) 明線(明るい)
・\((m + \frac{1}{2})\lambda\) なら \(\to\) 暗線(暗い)

ここまではOKかな?
問題は、「この経路差 \(|S_1P – S_2P|\) を、どうやって計算するか?」だ。

第2章:近似の魔術「経路差 = \(d \sin \theta\)」

実験の配置図を見てみよう。

  • スリットの間隔:\(d\) (ものすごく狭い。0.1mmとか)
  • スリットからスクリーンまでの距離:\(L\) (ものすごく遠い。1mとか)
  • スクリーンの中心 \(O\) から、点 \(P\) までの距離:\(x\)
(ヤングの実験の全体図と、スリット付近の拡大図)

僕らが知りたいのは、\(S_2P – S_1P\) (下のコース – 上のコース)の長さだ。

ここで、魔法の呪文「\(L\) は \(d\) に比べて、めちゃくちゃデカイ(\(L \gg d\))」を唱える。

想像してみて。1km先にあるゴールに向かって、隣り合った2人が走るようなもんだ。
ゴール地点 \(P\) から見れば、スタート地点の \(S_1\) と \(S_2\) は、ほぼ重なって見える。

だから、\(S_1\) から出る光と、\(S_2\) から出る光は、「ほぼ平行」に進んでいるとみなせるんだ!

(厳密には点 \(P\) で交わるから平行じゃないけど、角度がごくわずかだから平行とみなす)

そうすると、スリット付近の拡大図を見てほしい。

\(S_1\) から、下のコース(\(S_2P\))に向かって、垂線 \(S_1H\) を下ろす。

すると、\(S_1\) から先と、\(H\) から先は、「ほぼ同じ長さ」になる(二等辺三角形とみなす)。

つまり、知りたかった「経路差(距離のズレ)」は、垂線をおろしてはみ出た部分、「\(S_2H\)」の長さに等しいんだ!

この小さな直角三角形 \(S_1 H S_2\) に注目しよう。

斜辺の長さは \(d\) だ。
そして、角度(スリットと点Pを結ぶ線が、中心線となす角)を \(\theta\) とすると、この直角三角形の頂点の角度も \(\theta\) になる。(幾何学的に証明できるよ!)

だから、経路差 \(S_2H\) は、

$$経路差 = d \sin \theta$$

これが、第一の関門突破だ。

第3章:さらなる近似「\(\sin \theta \approx \tan \theta\)」

「よし、経路差は \(d \sin \theta\) だ!」

…でも、実験中に「角度 \(\theta\)」を測るのって、難しくないか?
分度器で測るには、\(\theta\) はあまりにも小さすぎる(0.1度とか)。

僕らが定規で測れるのは、「スクリーンの中心からの距離 \(x\)」と、「スクリーンまでの距離 \(L\)」だ。

そこで、2つ目の魔法の呪文「\(\theta\) はめちゃくちゃ小さい」を唱える。

角度 \(\theta\) がごく小さいとき、数学的に次の近似が成り立つ。

$$\sin \theta \approx \tan \theta$$

サルボルト
サルボルト

「えっ、サインとタンジェントって別物じゃん!」って思うよね。

でも、直角三角形の「高さ」がめちゃくちゃ低い(角度が小さい)時を想像して。

「斜辺(サインの分母)」と「底辺(タンジェントの分母)」って、ほぼ同じ長さに見えない?

だから、割り算した値もほぼ同じになるんだ。

全体図の大きな三角形に注目すると、\(\tan \theta = \frac{x}{L}\) だ。

よって、

$$\sin \theta \approx \frac{x}{L}$$

これを、さっきの経路差の式に代入しよう。

$$経路差 = d \sin \theta \approx d \frac{x}{L} = \frac{dx}{L}$$

ついに完成!これが、ヤングの実験で使う「経路差」の最終形態だ!

第4章:明線の位置と間隔 \(\Delta x\)

さあ、あとは計算するだけだ。

明るくなる場所(明線)の条件は、「経路差 = \(m\lambda\)」だったね。

$$\frac{dx}{L} = m\lambda \quad (m=0, 1, 2…)$$

これを、場所 \(x\) について解くと、

$$x_m = \frac{L\lambda}{d} \times m$$

これが「\(m\)番目の明線の位置」だ。

  • \(m=0\) のとき: \(x=0\) (ど真ん中は必ず明るい)
  • \(m=1\) のとき: \(x = \frac{L\lambda}{d}\) (1番目の明線)
  • \(m=2\) のとき: \(x = \frac{2L\lambda}{d}\) (2番目の明線)

この式を見ると、明線は「等間隔」に並んでいることがわかる。

隣り合う明線との間隔 \(\Delta x\)(デルタエックス)は、

$$\Delta x = x_{m+1} – x_m = \frac{L\lambda}{d}(m+1) – \frac{L\lambda}{d}m$$

$$\Delta x = \frac{L\lambda}{d}$$

これが、テストで一番よく聞かれる公式だ!

この式をじっと眺めると、面白いことがわかるよ。

  • \(\lambda\)(波長)が大きいほど、間隔 \(\Delta x\) は広がる。
    \(\to\) 「赤い光(波長長い)」はシマシマが太く、「青い光(波長短い)」はシマシマが細かい!
  • \(d\)(スリット間隔)を狭くするほど、間隔 \(\Delta x\) は広がる。
    \(\to\) 狭い穴を通すほど、光は大きく広がる(回折する)んだ!

物理強者向け:波動関数の重ね合わせ(光の強度の導出)

(ここからは、ハイレベルな方には敬語を使います)

これまでは「明線か、暗線か」の0か1かの話しかしていませんでしたが、実際には光の明るさ(強度)は、場所によって滑らかに変化しています(グラデーション)。

これを、波の式(波動関数)を使って厳密に導出しましょう。

点 \(P\) に到達する2つの光の電場(変位)を、単振動の式で表します。
振幅を \(E_0\)、角振動数を \(\omega\) とすると、

光1: \(y_1 = E_0 \sin(\omega t)\)
光2: \(y_2 = E_0 \sin(\omega t + \phi)\)

ここで、\(\phi\) は2つの波の「位相差」です。
経路差が \(\Delta L = d \sin \theta\) であるとき、位相差 \(\phi\) は次のように書けます。

$$\phi = 2\pi \times \frac{\text{経路差}}{\text{波長}} = \frac{2\pi}{\lambda} d \sin \theta$$

点 \(P\) での合成波 \(y\) は、重ね合わせの原理より \(y = y_1 + y_2\) です。
三角関数の和積公式 \(\sin A + \sin B = 2 \sin \frac{A+B}{2} \cos \frac{A-B}{2}\) を使うと、

$$y = E_0 \sin(\omega t) + E_0 \sin(\omega t + \phi)$$

$$y = 2E_0 \cos\left(\frac{\phi}{2}\right) \sin\left(\omega t + \frac{\phi}{2}\right)$$

これは、振幅が \(A(\phi) = 2E_0 \cos(\frac{\phi}{2})\) で振動する波を表しています。

光の明るさ(強度 \(I\))は、振幅の「2乗」に比例します。

$$I \propto \{A(\phi)\}^2 = 4E_0^2 \cos^2\left(\frac{\phi}{2}\right)$$

\(\phi\) を元に戻すと、強度分布の式が得られます。

$$I(\theta) = I_{max} \cos^2\left( \frac{\pi d \sin \theta}{\lambda} \right)$$

この式を見れば、
\(\frac{\pi d \sin \theta}{\lambda} = m\pi\) (つまり \(\cos^2\) が最大値 1 になるとき)
\(\to d \sin \theta = m\lambda\)
という、先ほどの「明線の条件」が自然に導かれることがわかります。

つまり、ヤングの実験のシマシマは、単なる白黒ではなく、\(\cos^2\) カーブ(余弦波の2乗)の美しいグラデーションを描いているのです。

おわりに

ヤングの実験、どうだったかな?

まとめ:
1. 光は波だから、距離の差(経路差)で干渉する。
2. 経路差の正体は、拡大図で見ると \(d \sin \theta\)
3. 近似 \(\sin \theta \approx x/L\) を使うと、経路差は \(\frac{dx}{L}\)
4. これが \(m\lambda\) なら明るい! \(x = \frac{L\lambda}{d} m\)
5. シマシマの間隔は \(\Delta x = \frac{L\lambda}{d}\)

図形の近似に惑わされず、「結局は、距離の差を求めているだけなんだ」と分かれば、回折格子や薄膜の干渉など、ほかの問題も全部同じ考え方で解けるようになるぞ!

それでは次の記事で!

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