なぜベクトルが物理に必要なの?スカラーとの違いを物理の視点でわかりやすく解説!

数学
サルボルト
サルボルト

ようこそ!サルボルトだよ

今回は、ベクトル(Vector)について勉強しよう。

「ベクトル」って言葉、聞いたことあるかな?

高校の「数学B」で習うんだけど、実は物理では、数学より一足先に、一番最初の「力学」からガンガン登場するんだ。

数学の教科書みたいに「ベクトルとは、有向線分であり…」なんて難しい定義から入ると、絶対にイヤになっちゃう。

だから、この記事では、「サルでもわかる」ように、「なんで物理にベクトルが必要なの?」ってところから、じ〜〜〜っくり解説していくよ。

物理の半分は、このベクトルを使いこなせるかどうかで決まると言ってもいい。逆に、これさえマスターすれば、物理はめちゃくちゃ「当たり前」の科目に変わるぞ!

この記事を読み終わる頃には、ベクトルが「謎の記号」じゃなくて、「超便利な道具」に見えてくるはずさ。

ベクトルじゃない仲間:「スカラー」

ベクトルを理解するために、まずは「ベクトルじゃないもの」をハッキリさせよう。

例えば、キミの目の前に「100」っていう数字が書かれた紙が置いてある。

これ、何だと思う?

サルボルト
サルボルト

「テストで100点取った!」かもしれないし、
「体重が100kgになっちゃった…」かもしれないし、
「100円玉拾った!」かもしれない。

「100点」「100kg」「100円」。

これらに共通しているのは、「大きさ(量)」だけで、意味が完全に伝わる、ということだ。

「キミの体重は、”北向き”に100kgだ」なんて言われたら、意味がわからないよね。

「テストの点数が、”下向き”に100点だった」も、意味不明だ。

このように、「大きさ(量)」だけで決まる量のことを、物理では「スカラー(Scalar)」と呼ぶんだ。

  • 時間(例:10秒)
  • 長さ、距離(例:5メートル)
  • 質量(例:3キログラム)
  • 温度(例:25℃)
  • エネルギー、仕事(例:100ジュール)

これらは全部「スカラー」の仲間だ。

今まで小学校や中学校で習ってきた「算数」や「数学」は、ほとんど、この「スカラー」だけを扱ってきたんだね。だから、足し算も「10kg + 5kg = 15kg」みたいに、ただ数字を足せばよかった。

「向き」が必要な仲間:「ベクトル」

じゃあ、いよいよ「ベクトル」の話だ。

また想像してみてほしい。

キミは、宝の地図を手に入れた。「学校の校庭の、ど真ん中からスタートして、『100歩』進め」と書いてある。

さあ、宝は見つかるかな?

サルボルト
サルボルト

…いや、絶対ムリだよね。

「100歩」っていう“大きさ”だけじゃ、どっちに進めばいいかわからない!

東かもしれないし、西かもしれない。最悪、南に進んだら校門から出ちゃうかもしれない。

もし、地図にこう書いてあったらどうだろう?

「校庭のど真ん中から、『北に』100歩進め」

これなら、完璧だ!誰がやっても、同じ場所にたどり着ける。

このように、「北に100歩」という情報には、

  • 大きさ(100歩)
  • 向き(北に)

という、2つの情報がセットになっている。

物理学では、この「大きさと向き」をセットで持っている量のことを、「ベクトル(Vector)」と呼ぶんだ。

物理で一番最初に出てくるベクトルは、「力(ちから)」だ。

「机を”10の力”で押して」と言われても、「どっちに?」ってなるよね。

「机を”右向きに”、10[N]の力で押して」と言われれば、カンペキだ。

他にも、「速度」(”北向きに”時速50km)とか、「加速度」(”下向きに”9.8m/s²)なんかも、全部ベクトルの仲間だ。

スカラー: 大きさだけの量(質量、時間、エネルギーなど)
ベクトル: 大きさと「向き」を持つ量(力、速度、加速度など)

ベクトルの「矢印(やじるし)」表記

「大きさと向き」を、ノートや黒板に書くとき、一番わかりやすい表現はなんだろう?

そう、「矢印(やじるし)」だ。

「北に100歩」なら、「北」の方向(例えば、紙の上向き)に、「100歩」の大きさに対応した”長さ”の矢印を描けばいい。

「東に50歩」なら、「東」(紙の右向き)に、「100歩」の矢印の”半分の長さ”の矢印を描けばいい。

(ベクトルを矢印で表す図)

矢印の「向き」が、ベクトルの「向き」を、
矢印の「長さ」が、ベクトルの「大きさ」を、

それぞれ表しているんだ。すごく直感的(ちょっかんてき)で、わかりやすいよね。

だから、物理では「力」を表すとき、物体から矢印をビヨーンと伸ばして描くんだね。あれは「ベクトル」を描いていたんだ。

そして、文字で書くときも、これがベクトルであることを示すために、文字の上に矢印を乗せることが多い。

$$\vec{F}$$

(Fは力(Force)の頭文字。矢印がついてたら「これはベクトル、つまり”向き”も大事な量なんだな」と思えばOK)

(高校の教科書では、太字の F でベクトルを表すことも多いけど、手書きだと区別がつかないから、サルボルトのサイトでは \(\vec{F}\) を使うことにするよ)

ベクトルの「足し算」= 矢印をつなげる!

さあ、ここからが物理だ。

「スカラー」の足し算はカンタンだった。「3kg + 5kg = 8kg」。

じゃあ、「ベクトル」の足し算はどうなる?

「”東向きに” 3Nの力」と「”北向きに” 4Nの力」を、一つの物体に「同時に」加えたら、どうなる?

サルボルト
サルボルト

「3 + 4 = 7N」かな?

ブブー!残念!

もし「”東向きに” 3N」と「”東向きに” 4N」だったら、もちろん「”東向きに” 7N」だ。

でも、「向き」が違うんだから、そんな単純な足し算はできない!

ここで「矢印」の出番だ。

ベクトルの足し算は、「矢印の”しりとり”」だと考えよう。

1. 最初のベクトル(東向きに3)を描く。
2. 1つ目の矢印の「先端(頭)」から、2つ目のベクトル(北向きに4)を描き始める。
3. 最初の「根元(しっぽ)」から、最後の「先端(頭)」までを、一気に結ぶ!

(ベクトルの合成・矢印のしりとり)

この、新しくできた「緑色の矢印」が、2つのベクトルを足し算した「答え」のベクトルだ。

この計算を、ベクトルの「合成(ごうせい)」と呼び、合成されたベクトルを「合力(ごうりょく)」(力が2つの場合)や「合ベクトル」と呼ぶ。

この「緑色の矢印」の「大きさ(長さ)」は、いくつだろう?

そう、「3」と「4」の「直角三角形の斜辺」になっている!

中学校で習った「三平方の定理(ピタゴラスの定理)」が使えるぞ!

$$(\text{緑の矢印の長さ})^2 = 3^2 + 4^2 = 9 + 16 = 25$$

だから、緑の矢印の長さは \(\sqrt{25} = 5\) だ!

答えは「7N」じゃなくて、「”北東”(の、とある向き)に、5Nの力」だったんだ!

(この「矢印のしりとり」は、順番を逆にしても(北に4 \(\to\) 東に3)、ちゃんと「平行四辺形」ができて、同じ答え(対角線)になるよ。だから、力が同時にかかっても大丈夫なんだ)

ベクトルの「割り算」= 矢印を分解する!

ベクトルの足し算(合成)がわかったら、今度はその「逆」を考えよう。

「足し算の逆」だから、まあ「引き算」なんだけど、物理ではもっと大事な考え方がある。

それが「分解(ぶんかい)」だ。

「合成」が「\(\vec{A} + \vec{B} = \vec{C}\)」だったのに対し、

「分解」は「\(\vec{C} = \vec{A} + \vec{B}\)」と、一つのベクトルを、複数の(たいてい2つの)ベクトルの「足し算のカタチ」に”バラす”ことなんだ。

「なんで、わざわざそんなメンドくさいことを?」

これが、物理(特に力学)の「キモ中のキモ」なんだ。

例えば、こんな問題を考えてみよう。

「”斜め右上45°”の向きに、10Nの力で、物体を引っ張った。この物体を、”右向き”に押す力と、”上向き”に持ち上げる力は、それぞれ何Nですか?」

(斜めの力を水平と鉛直に分解する図)

「斜め」のままじゃ、運動方程式 \(ma=F\) がめちゃくちゃ立てにくい。

「右向き(水平方向)」と「上向き(鉛直方向)」は、お互いに「直角(90°)」で、ジャマしあわない(数学用語で「独立」という)から、計算がしやすいんだ。

だから、「斜めの力 \(\vec{F}\)」を、「水平方向の力 \(\vec{F_x}\)」と「鉛直方向の力 \(\vec{F_y}\)」の2つに”分解”したい!

やり方は、さっきの「合成」の逆だ。

1. 元になるベクトル(斜め10N)を「対角線」とする、「長方形」を無理やり作る。
2. その「長方形」の「タテ」と「ヨコ」の辺が、分解されたベクトルの答えだ!

(なんでって、タテのベクトルとヨコのベクトルを「合成(しりとり)」したら、ちゃんと元の斜めベクトル(対角線)に戻るからね)

さあ、計算だ。

斜辺が「10」で、角度が「45°」の、直角三角形の、「タテ」と「ヨコ」の長さを求めればいい。

ここで、高校数学「三角比(\(\sin, \cos, \tan\))」の出番だ!

  • タテ(\(\vec{F_y}\)の大きさ)= (斜辺)× \(\sin 45^\circ\) = \(10 \times \frac{1}{\sqrt{2}} \fallingdotseq 7.07\) [N]
  • ヨコ(\(\vec{F_x}\)の大きさ)= (斜辺)× \(\cos 45^\circ\) = \(10 \times \frac{1}{\sqrt{2}} \fallingdotseq 7.07\) [N]

(\(\sin, \cos\) がわからなくても、45°の直角三角形の辺の比は「1 : 1 : \(\sqrt{2}\)」だって知ってれば、\(10 / \sqrt{2}\) って計算できるよね)

「斜め45°に10N」は、「右向きに約7N」と「上向きに約7N」の2つの力を、同時に加えるのと「まったく同じこと」だったんだ!

これで、タテはタテ(重力とか)、ヨコはヨコで、運動方程式が立てられるぞ!

物理強者向け:ベクトルの「本当の」力

(ここからは、ハイレベルな方には敬語を使います)

ここまで「矢印」としてベクトルを扱ってきましたが、数学や物理が本当に得意な人たちは、ベクトルを「数字のペア(成分)」として扱います。

x軸(水平)方向の「基本となるベクトル(長さ1)」を \(\hat{i}\)(または \(\vec{e_x}\))、
y軸(鉛直)方向の「基本となるベクトル(長さ1)」を \(\hat{j}\)(または \(\vec{e_y}\))、

とします。(これらを基底ベクトルと呼びます)

さっき「分解」した「右向きに7.07N、上向きに7.07N」の力 \(\vec{F}\) は、

$$\vec{F} = (7.07) \hat{i} + (7.07) \hat{j}$$

と書けます。もっとカンタンに、\(x\)成分と\(y\)成分だけを抜き出して、

$$\vec{F} = (7.07, 7.07)$$

と書くこともあります(成分表示)。

この「成分表示」の何がすごいかというと、

ベクトルの「足し算」が、ただの「数字の足し算」になるんです!

\(\vec{A} = (A_x, A_y)\) と \(\vec{B} = (B_x, B_y)\) を「合成」した \(\vec{C}\) は、

$$\vec{C} = \vec{A} + \vec{B} = (A_x + B_x, \quad A_y + B_y)$$

ほら、x成分どうし、y成分どうしを、ただ足すだけ。矢印の作図なんて、もういらないんです。

そして、物理学の「神髄」は、このベクトルを「微分・積分」することにあります。

物体の「位置」をベクトル \(\vec{r}(t) = (x(t), y(t))\) で表すと、

「速度」ベクトル \(\vec{v}(t)\) は、位置を「時間 \(t\) で微分」したもの、

$$\vec{v}(t) = \frac{d\vec{r}}{dt} = \left( \frac{dx}{dt}, \frac{dy}{dt} \right) = (v_x, v_y)$$

「加速度」ベクトル \(\vec{a}(t)\) は、速度を「もう一回、時間 \(t\) で微分」したもの、

$$\vec{a}(t) = \frac{d\vec{v}}{dt} = \left( \frac{dv_x}{dt}, \frac{dv_y}{dt} \right) = (a_x, a_y)$$

になります。

運動方程式 \(m\vec{a} = \vec{F}\) も、成分で書けば、

$$m(a_x, a_y) = (F_x, F_y)$$

$$ \to \quad \left\{ \begin{aligned} ma_x = F_x \\ ma_y = F_y \end{aligned} \right. $$

ほら!いつもキミたちが「x方向について〜」「y方向について〜」と、必死に分けて立てている、あの2つの式が、たった一言 \(m\vec{a} = \vec{F}\) で表せていたんです。

ベクトルとは、物理法則を、こんなにもシンプルで美しく記述するための「最強の言語」なんですね。

おわりに

今日のまとめだよ。

1. スカラー: 大きさだけの量(3kg)。足し算は「3 + 5 = 8」。
2. ベクトル: 大きさと「向き」を持つ量(右に3N)。矢印で表す。
3. ベクトルの合成(足し算): 矢印の「しりとり」。答えは「スタートからゴールまでの新しい矢印」。
4. ベクトルの分解(割り算): 一つの矢印を「タテ」と「ヨコ」(直角な2成分)にバラすこと。三角比(\(\sin, \cos\))が最強の武器。

物理学は、この「ベクトル」という言葉(道具)を手に入れたことで、爆発的に進歩したんだ。

キミたちも、これからは「力」や「速度」を見たら、「お、ベクトルだな。向きはどっちだ?分解しなくていいかな?」と考えるクセをつけよう。

それだけで、物理の成績は爆上がり間違いなしだ!

それでは次の記事で!

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