
ようこそ!サルボルトだよ
今回は、レンズの公式について、徹底的に勉強しよう。
メガネ、スマホのカメラ、望遠鏡…僕らの生活はレンズだらけだ。
でも、物理の授業でレンズが出てくると、みんな嫌な顔をする。
$$\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}$$
この式自体はシンプルだ。中学生でも覚えられる。
問題は、この式を使うときの「符号(プラス・マイナス)」だ。
「\(b\) がマイナスになるのは、虚像のときだっけ?凹レンズのときだっけ?」
「\(f\) がマイナスになるのはどっちだっけ?」
「実像と虚像って、そもそも何が違うの?」
この「符号パニック」に陥って、光の分野を捨ててしまう人が後を絶たない。
大丈夫。レンズの公式は、丸暗記するもんじゃない。
「光の道筋(作図)」さえイメージできれば、符号なんて当たり前に決まるんだ。
今日は、凸レンズの仕組みから、実像・虚像の正体、そして「フェルマーの原理」を使った美しすぎる導出まで、レンズの全てを解説するよ!
第1章:レンズの仕組みと「3つの光」
まずは、一番基本の「凸(とつ)レンズ」を考えよう。虫眼鏡のアレだ。
レンズの問題を解くには、たった「3本の代表的な光」の進み方を知っていればいい。
物体(ロウソクなど)の「てっぺん」から出た光が、レンズを通ってどう進むか?
- 平行に進む光:
レンズを通ったあと、折れ曲がって「焦点 \(F\)」を通る。 - 中心を通る光:
レンズの中心はガラスが平らだから、折れ曲がらずに「直進」する。 - 手前の焦点 \(F’\) を通る光:
1の逆。レンズを通ったあと、「平行」に進む。

この3本の光が、レンズの向こう側で「一点に集まる」場所。
そこに、物体の「てっぺん」の像ができるんだ。
第2章:「実像」と「虚像」の違い
ここで、言葉の定義をハッキリさせておこう。
1. 実像(Real Image)
さっきの作図みたいに、光がレンズを通ったあと、実際に一点に集まってできる像のこと。
ここに「白い紙(スクリーン)」を置くと、どうなると思う?
実際に光が集まっているから、紙の上にクッキリとロウソクの絵が映るんだ!
これが「実像」だ。映画館のスクリーンも、プロジェクターのレンズが作った実像だよ。
2. 虚像(Virtual Image)
もし、物体をレンズにめちゃくちゃ近づけたら(焦点距離より内側)、どうなる?
光はレンズを通ったあと、広がってしまって、二度と交わらない。
でも、その広がった光を、レンズの向こうから「人間の目」で見ると、脳みそが勘違いをする。
「光は直進してくるはずだ…ということは、この光は『あっち(奥)』から来たんだな?」
脳みそが、光を逆向きにたどった(点線)先に、ボワッと大きな像が見える。
これが「虚像」だ。虫眼鏡で拡大して見ているとき、キミが見ているのは虚像だ。
虚像の場所にスクリーンを置いても、光は集まっていないから、何も映らない。人間の目(やカメラ)を通して初めて見える、幽霊みたいな像なんだ。
第3章:公式 \(\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\) の導出
さあ、作図ができれば、公式は「三角形の相似」だけで作れる。
以下の文字を使うよ。
- \(a\):物体とレンズの距離
- \(b\):レンズと像の距離
- \(f\):焦点距離
- \(h\):物体の大きさ
- \(h’\):像の大きさ
ステップ1:倍率 \(m\) を求める
「中心を通る光」に注目しよう。
物体(高さ\(h\)、距離\(a\))と、像(高さ\(h’\)、距離\(b\))が作る、2つの直角三角形は「相似」だ。
だから、高さの比(倍率 \(m\))は、距離の比と同じになる。
$$m = \frac{h’}{h} = \frac{b}{a}$$
これが倍率の公式だ。「像の距離 \(b\)」が遠くなるほど、像はデカくなるんだね。
ステップ2:写像公式を作る
次に、「平行に進んで焦点を通る光」に注目しよう。
レンズの場所(高さ\(h\))から焦点(距離\(f\))までの三角形と、像(高さ\(h’\))から焦点(距離 \(b-f\))までの三角形も、相似だ。
比の式を立てると、
$$h : f = h’ : (b-f)$$
これより、倍率 \(\frac{h’}{h}\) は、
$$\frac{h’}{h} = \frac{b-f}{f} = \frac{b}{f} – 1$$
さっきのステップ1で、\(\frac{h’}{h} = \frac{b}{a}\) だったから、これをつなげると、
$$\frac{b}{a} = \frac{b}{f} – 1$$
この式の両辺を \(b\) で割って、整理すると…
$$\frac{1}{a} = \frac{1}{f} – \frac{1}{b} \quad \to \quad \frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}$$
完成!これがレンズの公式だ!
幾何学的に、ただの「相似」から導かれた式なんだね。
第4章:符号のルール(サルボルト式)
さあ、一番厄介な「プラス・マイナス」の話だ。
教科書にはいろんなルールが書いてあるけど、サルボルト式はこうだ。
サルボルト流・レンズの符号ルール
1. \(f\)(焦点距離): 「光を集める」ならプラス、「散らす」ならマイナス。
・凸レンズ / 凹面鏡(集める) \(\to\) \(f > 0\)
・凹レンズ / 凸面鏡(散らす) \(\to\) \(f < 0\)
2. \(b\)(像の距離): 「光が実際に届く場所」ならプラス、「届かない(幽霊)」ならマイナス。
・実像(レンズの向こう側) \(\to\) \(b > 0\)
・虚像(レンズの手前側) \(\to\) \(b < 0\)
例題:
焦点距離 \(10 \text{cm}\) の凸レンズがある。物体をレンズの手前 \(5 \text{cm}\) に置いた。像はどこにできる?
解答:
\(f = 10\)(凸レンズだからプラス)、\(a = 5\)。
公式に代入すると、
$$\frac{1}{5} + \frac{1}{b} = \frac{1}{10}$$
$$\frac{1}{b} = \frac{1}{10} – \frac{1}{5} = \frac{1}{10} – \frac{2}{10} = -\frac{1}{10}$$
よって、\(b = -10 \text{cm}\)。
「マイナス」が出た!
ということは、これは「虚像」だ。
レンズの「手前(物体と同じ側)」\(10 \text{cm}\) の場所に、虚像ができる、という意味だ。
倍率は \(m = |b/a| = |-10/5| = 2\) 倍。
これが「虫眼鏡」の使い方だね!
物理強者向け:フェルマーの原理による導出
(ここからは、ハイレベルな方には敬語を使います)
レンズの公式は、幾何学(三角形の相似)でも導けますが、波動としての本質は「フェルマーの原理(最短時間の原理)」にあります。
フェルマーの原理とは、「光は、A点からB点まで進むとき、所要時間が最小(極値)になる経路を通る」というものです。
レンズが像を結ぶとき、実は驚くべきことが起きています。
物体の一点Pから出た光は、レンズの真ん中を通ったり、端を通ったり、無数のルートを通って像の一点Qに集まります。
このとき、「どのルートを通っても、PからQまでの所要時間は全く同じ」なのです。(だからこそ、位相が揃って強め合い、像ができるのです)
これを確かめてみましょう。
光軸から距離 \(h\) の場所を通る光を考えます。
物体距離 \(a\)、像距離 \(b\) とします。
幾何学的な距離(道のり)\(L\) は、三平方の定理より、
$$L = \sqrt{a^2 + h^2} + \sqrt{b^2 + h^2}$$
「近軸光線(\(h \ll a, b\))」という近似(\(h\)が小さい)を使うと、\(\sqrt{1+x} \approx 1 + x/2\) より、
$$L \approx a\left(1 + \frac{h^2}{2a^2}\right) + b\left(1 + \frac{h^2}{2b^2}\right) = (a+b) + \frac{h^2}{2}\left(\frac{1}{a} + \frac{1}{b}\right)$$
幾何学的な距離は、真ん中(\(h=0\))より、端っこ(\(h\)大)の方が、\(\frac{h^2}{2}(\frac{1}{a}+\frac{1}{b})\) だけ長くなります。
しかし!レンズは真ん中が分厚く、端っこが薄いですね。
ガラスの中(屈折率 \(n\))では、光速は \(1/n\) に落ちます。つまり、ガラスが分厚いほど、通過に時間がかかり、「距離を損する」のです。
レンズの厚さが \(h^2\) に比例して薄くなっているとしましょう(球面レンズの近似)。
レンズによる「距離の短縮効果(光路長の減少)」が、ちょうど幾何学的な「距離の増加」を打ち消せば、トータルの時間は一定になります。
その「打ち消す条件」こそが、
$$\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = (一定値)$$
となり、この一定値がレンズの性能 \(\frac{1}{f}\) になるのです。
つまり、レンズの公式とは、「真ん中のルートも端っこのルートも、同時に到着するようにガラスの厚みを調整しました!」という式だったのです。

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