ケプラーの法則とは?なぜ万有引力のエネルギーがマイナスになるの?解説します

サルボルト
サルボルト

ようこそ!サルボルトだよ

今回は、万有引力(ばんゆういんりょく)とケプラーの法則について、徹底的に勉強しよう。

力学のラスボスだ。スケールがいきなり「宇宙」になる。

「リンゴは落ちるのに、なんで月は落ちてこないの?」
「地球の周りを回る人工衛星の速さは?」
「位置エネルギー \(U = -G\frac{Mm}{r}\) … なんでマイナスがつくんだよ!」

特に最後の「マイナス」で、多くの受験生が思考停止に陥る。

「\(mgh\) はプラスだったじゃん!なんで宇宙に行くとマイナスになるの?エネルギーが負ってどういうこと?」

わかる。めちゃくちゃ気持ち悪いよね。

でも、安心してほしい。

この記事では、「ケプラーの発見」から「ニュートンのひらめき」への歴史的な流れを追いながら、最大のナゾである「マイナスのエネルギー」の意味を、サルでもわかるように「穴掘り」の例えで完全解説するよ。

第1章:ケプラーの3つの法則「惑星の動きにはルールがある!」

ニュートンが出てくる少し前、ヨハネス・ケプラーという人が、師匠(ティコ・ブラーエ)が残した膨大な天体観測データを解析して、ある「3つのルール」を見つけた。

これが「ケプラーの法則」だ。

第一法則:楕円軌道の法則

「惑星は、太陽を一つの焦点とする『楕円(だえん)』軌道を描く」

昔はみんな「円(まんまる)」だと思ってた。でも実は、ちょっとつぶれた「楕円」だったんだ。

第二法則:面積速度一定の法則

「惑星と太陽を結ぶ線分が、単位時間に描く面積は一定である」

これは、何を言っているかというと、「太陽に近いときは速く、遠いときは遅く動く」ということだ。

フィギュアスケートの選手が、手を縮めると回転が速くなるのと同じ原理(角運動量保存則)なんだけど、ケプラーは観測データだけでこれに気づいた。スゴイ。

第三法則:調和の法則

「公転周期 \(T\) の2乗は、軌道の長半径 \(a\) の3乗に比例する」

$$\frac{T^2}{a^3} = k \quad (一定)$$

「遠くの惑星ほど、一周するのにメチャクチャ時間がかかる」という法則だ。
(地球は1年だけど、土星は約30年かかるよね)

ケプラーは、「どう動くか(How)」は発見した。でも、「なぜそう動くのか(Why)」まではわからなかった。

その「Why」を解き明かしたのが、アイザック・ニュートンだ。

第2章:万有引力の法則「リンゴも月も同じだ!」

ニュートンは考えた。

「月が地球の周りを回っている(円運動している)ということは、月は常に地球に向かって引っ張られているはずだ(向心力)。」

「この力は、木からリンゴを落とす力(重力)と、同じものなんじゃないか?」

そして彼は、ケプラーの第三法則などをヒントに、とんでもない式を導き出した。

すべての物体(質量を持つもの)は、お互いに引き合っている。その力 \(F\) は、

$$F = G \frac{Mm}{r^2}$$

  • \(M, m\):2つの物体の質量 [kg]
  • \(r\):物体間の距離 [m](中心間の距離)
  • \(G\):万有引力定数(ものすごく小さい値)

これが「万有引力の法則」だ。

「距離 \(r\) の2乗に反比例する」というのがポイントだ。離れれば離れるほど、力は急激に弱くなる。

サルボルト
サルボルト

「じゃあ、地上の重力 \(mg\) とは何が違うの?」

いい質問だ!

地上の重力 \(mg\) は、この万有引力の「簡易版」なんだ。
地球の質量を \(M\)、半径を \(R\) とすると、地上の物体(距離 \(R\))にかかる万有引力は、

\(F = G\frac{Mm}{R^2} = m \times \left( G\frac{M}{R^2} \right)\)

このカッコの中身 \(( G\frac{M}{R^2} )\) を計算すると、なんと約9.8になる。
そう、これが重力加速度 \(g\) の正体だったんだ!

第3章:最大のナゾ「位置エネルギーがマイナス!?」

さあ、ここからが本番だ。

万有引力による位置エネルギー \(U\) の公式を見てみよう。

$$U = -G \frac{Mm}{r}$$

マイナスがついている。しかも、距離 \(r\) が大きい(遠くに行く)ほど、\(U\) はゼロに近づく(大きくなる)。

「??? 高いところに行くほどエネルギーは増えるはずなのに、なんでマイナス?」

これを理解するために、「宇宙の穴」を想像してほしい。

(無限遠を基準としたポテンシャルの井戸の図)

宇宙空間は、何もない平らな地面だとする。ここを「エネルギーの基準(0ジュール)」としよう。
これを「無限遠(むげんえん)」と呼ぶ。地球からずーっと離れた、引力の影響がない場所だ。

そこに、地球という重たい星がある。

地球は、周りの空間をズズズ…と引きずり込んで、深い深い「穴(落とし穴)」を作っているようなものだ。

この「穴」に落ちてしまったのが、僕たちだ。

  • 無限遠(穴の外): 自由な世界。エネルギーは 0
  • 地表(穴の底): 穴に落ちている状態。ここから「外(0)」に出るには、ものすごいエネルギーが必要だ。

もし、「穴の底」のエネルギーがプラス(例えば100)だったら、何もしなくても外(0)に飛び出せちゃうことになる。おかしいよね。

「外(0)」よりも低いんだから、穴の中のエネルギーは「マイナス」でなきゃいけないんだ!

地表の位置エネルギー \(U = -G\frac{Mm}{R}\) というのは、
「お前は宇宙の借金生活者だ! 無限遠(自由)に行きたければ、借金 \(G\frac{Mm}{R}\) を返せ(エネルギーを払え)!」
という意味なんだ。

サルボルト
サルボルト

ロケットを打ち上げるっていうのは、燃料を燃やして運動エネルギー \(K\) を作り、この「マイナスの位置エネルギー(借金)」を完済して、プラマイゼロ(無限遠)に脱出する行為なんだよ。

これがわかれば、「第二宇宙速度(脱出速度)」の式も一瞬で作れる。

$$ \frac{1}{2}mv^2 + \left( -G\frac{Mm}{R} \right) = 0 $$

(運動エネルギー + 借金 = 完済!)

第4章:力学的エネルギー保存則と楕円軌道

惑星や人工衛星の運動では、この「力学的エネルギー保存則」が大活躍する。

$$E = \frac{1}{2}mv^2 – G\frac{Mm}{r} = (一定)$$

特に、「楕円軌道」の問題では、これと「面積速度一定の法則」を連立させて解くのが鉄板パターンだ。

例題

地表すれすれを円軌道で回っていた人工衛星(速さ \(v_1\))を加速させ、速さを \(v_2\) にしたところ、地球の中心から距離 \(3R\) の地点まで到達する楕円軌道になった。\(v_2\) を \(v_1\) を用いて表せ。

考え方:

1. 近地点(スタート): 距離 \(R\)、速さ \(v_2\)
2. 遠地点(ゴール): 距離 \(3R\)、速さ \(v_3\)(未知数)

未知数が \(v_2\) と \(v_3\) の2つあるから、式が2つ必要だ。

  1. 面積速度一定の法則:(\(r \times v\) が一定)
    \(R \times v_2 = 3R \times v_3 \quad \to \quad v_3 = \frac{1}{3}v_2\)
  2. エネルギー保存則:
    \(\frac{1}{2}m v_2^2 – G\frac{Mm}{R} = \frac{1}{2}m v_3^2 – G\frac{Mm}{3R}\)

この2つを連立すれば、必ず解ける!

(ちなみに、最初の円軌道の速さ \(v_1\) は、運動方程式 \(m\frac{v_1^2}{R} = G\frac{Mm}{R^2}\) から求まるよ。これを \(GM\) の消去に使うんだ)

物理強者向け:積分による位置エネルギーの導出

(ここからは、ハイレベルな方には敬語を使います)

なぜ、位置エネルギー \(U\) は \(-G\frac{Mm}{r}\) なのか?
「無限遠を基準(0)とする」という定義に従って、万有引力を積分して導出しましょう。

位置エネルギー \(U(r)\) の定義は、「基準点(\(\infty\))から、その点 \(r\) まで、物体を運ぶのに、外力がする仕事」です。

万有引力 \(F = G\frac{Mm}{x^2}\) は「引力(中心向き)」なので、逆らって運ぶ外力は「外向き」に同じ大きさが必要です。
しかし、無限遠から \(r\) まで運ぶ(近づける)場合、外力は万有引力を支える方向(外向き)に加えつつ、移動方向は内向き(\(dr < 0\))になります。

計算しやすいように、「点 \(r\) から無限遠まで運ぶ仕事」を考え、それにマイナスをつける(=位置エネルギーの差)と考えましょう。

点 \(r\) にある物体を、無限遠まで引き離すのに必要な仕事 \(W\) は、

$$W = \int_{r}^{\infty} F(x) dx = \int_{r}^{\infty} G\frac{Mm}{x^2} dx$$

\(\frac{1}{x^2}\) の積分は \(-\frac{1}{x}\) ですから、

$$W = GmM \left[ -\frac{1}{x} \right]_{r}^{\infty} = GmM \left( 0 – \left( -\frac{1}{r} \right) \right) = G\frac{Mm}{r}$$

つまり、穴の底(\(r\))から外(\(\infty\))に出るためには、プラスの仕事 \(G\frac{Mm}{r}\) が必要だということです。

エネルギー保存則的に言えば、
\(U(r) + W = U(\infty) = 0\)
となるので、移項して、

$$U(r) = -W = -G\frac{Mm}{r}$$

となり、公式が導かれました。

積分範囲が \(\infty\) を含む広義積分ですが、\(\frac{1}{r^2}\) は遠方で急速に0に収束するため、有限の値(ポテンシャル)を持つことができるのです。

おわりに

万有引力、どうだったかな?

「位置エネルギーがマイナス」というのは、最初はギョッとするけど、「借金生活」だと思えばわかりやすい。

まとめ:
1. 万有引力:\(F = G\frac{Mm}{r^2}\)(2乗に反比例!力だ!)
2. 位置エネルギー:\(U = -G\frac{Mm}{r}\)(1乗に反比例!エネルギーだ!)
3. マイナスの意味:無限遠(0)より低い「穴の中」にいるから。
4. 楕円軌道:「面積速度一定」「エネルギー保存」の連立で倒せ!

スケールは大きくても、やることは地上の物理(力学)と同じ。

「力」と「エネルギー」を使い分けて、宇宙の旅を楽しんでくれ!

それでは次の記事で!

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