
ようこそ!サルボルトだよ
今回は、力学の中でも特にドラマチックな瞬間、「衝突」と「反発係数(はねかえり係数)」について、これでもかというくらい徹底的に勉強しよう。
ボールを床に落とすと、跳ね返ってくる。
ビリヤードの球がぶつかると、パカーン!と散らばっていく。
日常茶飯事の現象だけど、これを物理的に解こうとすると、途端に難しく感じる人が多い。
「反発係数の公式 \(e = – \frac{v’ – V’}{v – V}\) … 分母と分子、どっちがどっちだっけ?」
「マイナスをつけるのを忘れて計算が狂った!」
「斜めの壁に当たった時、角度はどうなるの?」
特に、「運動量保存則」と「反発係数の式」の連立方程式は、計算が面倒くさくてミスもしやすい。
この記事では、教科書の公式をただ暗記するのではなく、「なぜそうなるのか?」という理屈から、「絶対に計算ミスをしないための立式手順」まで、余すところなく解説していく。
基礎から応用まで、この記事一本で「衝突マスター」になれるように構成したから、少し長いけど最後までついてきてくれ!
第1章:反発係数 \(e\) の正体
まず、「反発係数 \(e\)」の正体から暴いていこう。
スーパーボールを床に落とすと、元気よく跳ね返ってくる。
粘土の塊を床に落とすと、ベチャッ!と張り付いて跳ね返らない。
軟式テニスのボールなら、その中間くらいだ。
この違いは何だ?
そう、物体の「跳ね返りやすさ」だ。
物理では、これを \(0\) から \(1\) の間の数値で表し、「反発係数(はねかえり係数) \(e\)」と呼ぶ。
1.1 速さの比で考える
定義はめちゃくちゃシンプルだ。
反発係数 \(e\) の定義(サルボルト式)
$$e = \frac{\text{衝突「後」の遠ざかる速さ}}{\text{衝突「前」の近づく速さ}}$$
これだけ。「速さ(大きさ)」の比なんだ。
例えば、床に向かって \(10 \text{m/s}\) でボールを投げつけた(近づく速さ 10)。
ボールが \(6 \text{m/s}\) で跳ね返ってきた(遠ざかる速さ 6)。
反発係数 \(e\) は?
$$e = \frac{6}{10} = 0.6$$
簡単だよね?
1.2 自由落下での測定方法
「速さ」を測るのは大変だけど、「高さ」ならメジャーで測れる。
自由落下の実験で \(e\) を求めてみよう。
高さ \(h_0\) からボールを自由落下させる。
床に衝突する直前の速さ \(v\) は、力学的エネルギー保存則 \(mgh_0 = \frac{1}{2}mv^2\) より、
$$v = \sqrt{2gh_0}$$
床に衝突して、速さ \(v’\) で跳ね返り、高さ \(h’\) まで上がった。
同様に、\(v’ = \sqrt{2gh’}\) だ。
反発係数の定義より、
$$e = \frac{v’}{v} = \frac{\sqrt{2gh’}}{\sqrt{2gh_0}} = \sqrt{\frac{h’}{h_0}}$$
つまり、「跳ね上がった高さと、元の高さの比のルート」をとれば、反発係数がわかるんだ。

逆に言えば、\(h’ = e^2 h_0\)。
1回バウンドするごとに、高さは \(e^2\) 倍になっていくんだね。
第2章:2物体の衝突(相対速度)
次は、動いているもの同士の衝突だ。
物体A(速度 \(v_A\))が、物体B(速度 \(v_B\))を追いかけて、ガチンとぶつかった。衝突後の速度を \(v’_A, v’_B\) としよう。
ここで大事なのは、「相手から見た速度(相対速度)」だ。
衝突前:
AがBに近づいていく。
その「近づく速さ」は、相対速度の大きさ \(|v_A – v_B|\) だ。
衝突後:
ぶつかった後、AはBに置いていかれ、BはAから逃げていく。
つまり「遠ざかる」。
その「遠ざかる速さ」は、相対速度の大きさ \(|v’_A – v’_B|\) だ。
反発係数 \(e\) の定義より、
$$e = \frac{\text{遠ざかる速さ}}{\text{近づく速さ}} = \frac{|v’_A – v’_B|}{|v_A – v_B|}$$
これを、教科書風に「速度(符号つき)」で書くと、こうなる。
$$e = – \frac{v’_A – v’_B}{v_A – v_B}$$
「なんでマイナスがつくの?」と疑問に思うかもしれない。
衝突前後で、相対速度の向きが必ず「逆(プラスからマイナス、またはその逆)」になるからだ。
\(e\) は必ずプラスの値にしたいので、無理やりマイナスをつけて符号をひっくり返して、辻褄を合わせているんだ。
計算するときは、分母を払ったこの形が一番使いやすいぞ。
反発係数の式の決定版
\(v_A’ – v_B’ = -e (v_A – v_B)\)
「あとの相対速度は、まえの相対速度の \(-e\) 倍!」
これなら分母分子で迷うこともない。「前」に \(-e\) を掛ければ「後」になる。シンプルだろう?
第3章:衝突の分類とエネルギー
\(e\) の値によって、衝突には名前がついている。これも入試でよく聞かれるから整理しておこう。
1. 弾性衝突(\(e=1\))
理想的な衝突。エネルギーロスが全くない。
気体分子の衝突や、硬い鋼球同士の衝突などがこれに近い。
「力学的エネルギーが保存される」のが最大の特徴だ。
2. 非弾性衝突(\(0 < e < 1\))
日常のほとんどの衝突はこれ。
「ゴチッ」という音が出たり、少し熱を持ったりして、運動エネルギーの一部が失われる。
力学的エネルギーは保存されない。
3. 完全非弾性衝突(\(e=0\))
跳ね返らない衝突。つまり、ぶつかった後、2つの物体が「合体」して、同じ速度で進む。
エネルギーの損失が一番大きいパターンだ。
第4章:基本演習(一直線上の衝突)
さあ、ここまでの知識を使って、計算問題を解いてみよう。
「運動量保存則」と「反発係数の式」の連立だ。
なめらかな水平面上で、質量 \(2.0 \text{kg}\) の小球Aが速さ \(6.0 \text{m/s}\) で右へ、質量 \(1.0 \text{kg}\) の小球Bが速さ \(3.0 \text{m/s}\) で左へ進んで来て、正面衝突した。2球の間の反発係数を \(0.50\) とする。衝突後のAとBの速度(向きと大きさ)を求めよ。
解説と計算手順:
まず、軸を決める。「右向きを正(+)」としよう。
左向きの速度はマイナスをつけて表すことを忘れずに!
【Step 1】状況整理
衝突前:
Aの速度 \(v_A = +6.0 \text{m/s}\)
Bの速度 \(v_B = -3.0 \text{m/s}\) (左向きだからマイナス!)
衝突後:
Aの速度 \(v’_A\) (未知数)
Bの速度 \(v’_B\) (未知数)
(とりあえず両方ともプラス(右向き)と仮定して計算する。答えがマイナスなら左向きだったとわかる)
【Step 2】式を立てる
未知数が2つあるから、式が2本必要だ。
1. 運動量保存則:
(衝突前の運動量の和)=(衝突後の運動量の和)
$$2.0 \times (+6.0) + 1.0 \times (-3.0) = 2.0 v’_A + 1.0 v’_B$$
整理すると、
$$12 – 3 = 2v’_A + v’_B$$
$$2v’_A + v’_B = 9 \quad \cdots ①$$
2. 反発係数の式:
「あとの相対速度 = \(-e\) × まえの相対速度」
$$v’_A – v’_B = -0.50 \times ( v_A – v_B )$$
$$v’_A – v’_B = -0.50 \times \{ 6.0 – (-3.0) \}$$
$$v’_A – v’_B = -0.50 \times 9.0$$
$$v’_A – v’_B = -4.5 \quad \cdots ②$$
【Step 3】連立方程式を解く
①と②を足し算してみよう。\(v’_B\) が消えるはずだ。
\((2v’_A + v’_B) + (v’_A – v’_B) = 9 + (-4.5)\)
\(3v’_A = 4.5\)
\(v’_A = 1.5 \text{m/s}\)
これを②に代入する。
\(1.5 – v’_B = -4.5\)
\(v’_B = 1.5 + 4.5 = 6.0 \text{m/s}\)
答え:
A:右向きに \(1.5 \text{m/s}\)
B:右向きに \(6.0 \text{m/s}\)

計算のコツ!
反発係数の式を使うときは、必ず \( (v_A – v_B) \) の引き算の順序を間違えないように。
左辺も右辺も「A引くB」で統一するのが鉄則だ!
第5章:斜めの衝突(壁との対決)
ここからが応用編だ。壁に対して斜めにボールが飛んできた場合はどうする?
ベクトル(矢印)で考える必要があるけど、鉄則は一つ。
「壁に垂直な成分(タテ)」と「壁に平行な成分(ヨコ)」に分解せよ!

- 壁に平行な成分(ヨコ):
壁はツルツル(なめらか)だと仮定する。
摩擦がないなら、横向きには力を受けない(力積ゼロ)。
つまり、速度は変わらない!(\(v’_x = v_x\)) - 壁に垂直な成分(タテ):
壁にガツンとぶつかるのは、こっちの成分だ。
壁からの垂直抗力(力積)を受けて、跳ね返る。
ここで反発係数 \(e\) を使う!
速度は逆向きになり、大きさは \(e\) 倍になる!(\(v’_y = -e v_y\))
これだけだ。
ヨコはそのまま。タテは \(-e\) 倍。
あとは合成すれば、跳ね返ったあとの速度と角度がわかる。
練習問題2:床への斜方投射
なめらかな床の上空から、小球を水平に対して角 \(\theta\) で投げ下ろしたところ、速さ \(v_0\) で床に衝突して跳ね返った。床と小球の間の反発係数を \(e\) とする。跳ね返った直後の速度の大きさ \(v’\) と、跳ね返る角度 \(\theta’\)(床とのなす角)について、\(\tan \theta’\) を求めよ。
解説:
衝突直前の速度 \(v_0\) を分解しよう。
- 水平成分: \(v_x = v_0 \cos \theta\)
- 鉛直成分: \(v_y = v_0 \sin \theta\) (下向き)
衝突直後の速度 \(v’\) の成分はこうなる。
- 水平成分: \(v’_x = v_x = v_0 \cos \theta\) (変わらない!)
- 鉛直成分: \(v’_y = e v_y = e v_0 \sin \theta\) (向きが上になり、\(e\)倍!)
速さ \(v’\):
三平方の定理より、
$$v’ = \sqrt{(v’_x)^2 + (v’_y)^2} = \sqrt{(v_0 \cos \theta)^2 + (e v_0 \sin \theta)^2}$$
$$v’ = v_0 \sqrt{\cos^2 \theta + e^2 \sin^2 \theta}$$
角度 \(\tan \theta’\):
タンジェントは「タテ ÷ ヨコ」だ。
$$\tan \theta’ = \frac{v’_y}{v’_x} = \frac{e v_0 \sin \theta}{v_0 \cos \theta} = e \frac{\sin \theta}{\cos \theta}$$
$$ \tan \theta’ = e \tan \theta$$
この結果は面白いぞ。
「跳ね返りの角度のタンジェントは、入射角のタンジェントの \(e\) 倍になる」
\(e < 1\) だから、\(\tan \theta’\) は \(\tan \theta\) より小さくなる。つまり、跳ね返るたびに角度は寝ていって、だんだん地を這うようになるんだ。
第6章:エネルギー損失の計算(裏技あり)
最後に、衝突によって失われたエネルギー \(\Delta E\) の計算だ。
非弾性衝突(\(e < 1\))では、運動エネルギーの一部が熱や音に変わって失われる。
計算式はこうだ。
$$\Delta E = (\text{衝突前の全運動エネルギー}) – (\text{衝突後の全運動エネルギー})$$
これを真面目に計算すると、結構大変だ。
さっきの練習問題1(\(m_A=2, v_A=6, m_B=1, v_B=-3, e=0.5\))でやってみよう。
衝突前: \(K_{pre} = \frac{1}{2}(2)(6)^2 + \frac{1}{2}(1)(-3)^2 = 36 + 4.5 = 40.5 \text{J}\)
衝突後: \(K_{post} = \frac{1}{2}(2)(1.5)^2 + \frac{1}{2}(1)(6)^2 = 2.25 + 18 = 20.25 \text{J}\)
損失: \(\Delta E = 40.5 – 20.25 = 20.25 \text{J}\)
…計算できたけど、もっとスマートにやりたいよね?
ここで、以前の記事「相対運動エネルギー」で紹介した知識が火を吹く。
実は、失われるエネルギーは、「相対運動エネルギー」の減少分と完全に一致するんだ。
$$\Delta E = \frac{1}{2} \mu v_{rel}^2 (1 – e^2)$$
- \(\mu\):換算質量 \(= \frac{m_A m_B}{m_A + m_B}\)
- \(v_{rel}\):衝突前の相対速度の大きさ \(|v_A – v_B|\)
この公式を使ってみよう。
\(\mu = \frac{2 \times 1}{2 + 1} = \frac{2}{3}\)
\(v_{rel} = |6 – (-3)| = 9\)
\(e = 0.5\)
$$\Delta E = \frac{1}{2} \times \frac{2}{3} \times 9^2 \times (1 – 0.5^2)$$
$$= \frac{1}{3} \times 81 \times 0.75 = 27 \times \frac{3}{4} = \frac{81}{4} = 20.25 \text{J}$$
一瞬で一致した!
衝突後の速度 \(v’\) を求めなくても、エネルギー損失が出せちゃうんだ。
物理強者向け:重心系と実験室系
(ここからは、ハイレベルな方には敬語を使います)
なぜ、エネルギー損失の式があんなに美しくなるのでしょうか?
それは、運動エネルギーを「重心運動エネルギー」と「相対運動エネルギー」に分離することで見えてきます。
系の全運動エネルギー \(K\) は、以下のように分解できます(ケーニッヒの定理の応用)。
$$K = K_G + K_{rel} = \frac{1}{2}(m_A+m_B)V_G^2 + \frac{1}{2}\mu v_{rel}^2$$
ここで、\(V_G\) は重心速度です。
衝突において外力が働かない場合、運動量保存則により重心速度 \(V_G\) は一定不変です。
つまり、\(K_G\) は衝突の前後で全く変化しません。
エネルギーが変化するのは、後半の「相対運動エネルギー \(K_{rel}\)」の部分だけなのです。
衝突前の相対速度を \(v_{rel}\)、衝突後を \(v’_{rel}\) とすると、反発係数の定義より \(v’_{rel} = e v_{rel}\) です。
よって、
$$\Delta E = K_{rel} – K’_{rel} = \frac{1}{2}\mu v_{rel}^2 – \frac{1}{2}\mu (e v_{rel})^2$$
$$\Delta E = \frac{1}{2}\mu v_{rel}^2 (1 – e^2)$$
これが導出の全貌です。
重心に乗って世界を見れば(重心系)、2つの物体は単に近づいてきて、\(e\)倍の速さで遠ざかるだけです。
この視点を持てば、どんな複雑な衝突もシンプルに解析できるのです。
おわりに
衝突と反発係数、どうだったかな?
まとめ:
1. 反発係数 \(e\) は「遠ざかる速さ ÷ 近づく速さ」。
2. 2物体のときは「相対速度」を見る。
3. 斜めの衝突は「タテ・ヨコ」分解。タテだけ \(e\) 倍。
4. エネルギー損失は「換算質量」と「相対速度」で瞬殺できる!
計算が面倒な単元だけど、こうやって「理屈」と「裏技」を組み合わせれば、確実に得点源にできる。
ぜひ、今回紹介したテクニックを使って、物理の問題を「パズル」のように楽しんで解いてみてくれ!
それでは次の記事で!

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